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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠10(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 285,635 字 · 558 頁
「はい」
「それでは、お米の方をたのみますよ」
と言ってお松が出て行きました。やっぱり、例のイヤな絵馬の風呂敷包を持って行こうと言わないのは、与八にしかるべく処分を任してしまったつもりなのでしょう。
与八は、その風呂敷包を抱えて、道場を出で、高い石段を下って、街道筋の方へ出ながら、
「そうだっけな、何か江戸で悪いことをした奴があって、それを青梅の裏宿まで追い込んで、そこで姿を見失ってしまったが、どうもこの沢井あたりへ逃げ込んだにちげえねえということで、今日のお正午ごろ、今お松さんがいったような触れがあったっけな……してみると今夜は、水車小屋へ泊らねえがいいかな、こっちの家へ泊った方が、みんなの安心になるかも知れねえ。だがこっちはこれで近所も近いし、お松さんという子は度胸があるから……」
与八は、こんなことを考えながら、高い石段を下って街道筋へ出で、崖道を下って、多摩川の岸の水車小屋まで着いてしまいました。案内知った戸をガタピシとあけて、休ませておいた杵の間を通り、糠だらけの棚の板から、携えて来たブラ提灯をつり下げ、そうして、炉の傍へ寄っておもむろに焚火をはじめて、それが燃え上るところに両手をかざし、目をつぶってどっしりと坐り込んでいると、戸一枚を隔てた多摩川の流れが、夜の静かなほどに淙々たる響きを立てます。