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だいぼさつとうげ

大菩薩峠19

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁

青空文庫

聞いてみれば、哀れでないという話ではないが、そうした行き方は世間にはザラにあることだと、例によって竜之助の同情がつめたい。つむじが意地を巻いて心頭に上って来たが、やっぱり挨拶の都合上で、

「して、その財布の金はありましたか」

と駄目を押したが、我ながら、これは甚だまずい、まずいだけではない、この場合、さもしく響く挨拶だと思いました。

堂守の尼も、そこを透かさず咎めたわけでもありますまいが、

「左様に仰せられるものではござりませぬ、お金の有る無しは問題ではござりませぬ、捨てられた二つの生命の恨み、よし、その財布のお金が十倍になり、百倍になって戻って参りましたからとて、もはや二人の命は浮べるものではござりませぬ」

「いや、その財布の金を盗んだものに、拙者は心当りがあるので、お聞き申してみたまでだ」

「そのお金を盗りました者が」

「たしかに、心当りがある」

「それはもはや疾うの昔のことでござりますが」

「いや、現在、拙者の頭では――その美僧の金を奪った女がほかにある」

「何と仰せられまする」

堂守の尼は、竜之助の言うことを解し得ざらんとしていたが、その時、また竜之助の心頭にむらむらと上って来たのは、つい今まで忘れていた、昨晩、斎藤一が口を極めて艶称した、あの愛猫を探すべく不意に二人の座敷へ侵入して来た、しなやかな美人のことであり