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だいぼさつとうげ
大菩薩峠19
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠19(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 319,771 字 · 617 頁
その格闘史としては、古今無類の七条油小路の現場へ駈けつけて、そのいずれかの一方へ助太刀をするかと思えばそうではない。また乱刃のあとへなり先へなり廻って、後見の気取りで逐一、その剣、太刀の音の使いわけでも聞いて甘心するつもりかと思えば、そうでもない。
この男の腕立てとして、もうそういう油の気の多いところは向かない。猫を一匹つかみ殺して、虫も殺さぬ娘を一人絶え入らせるだけの程度がせいぜいで、その前の晩か、後の晩かに、さほどの乱刃が月光の下に行われた京の天地とは……およそ方角の異った方へ、ひとり朧ろげな足どりをして、しょんぼりと、月夜の下に見えつ隠れつして、ふらふらと辿り行くのは、三条から白川橋、東海道の本筋の夜の道、蹴上、千本松、日岡、やがて山科。
多分、関の清水の大谷風呂あたりへ、足もとの暗いうちに辿りついて、空虚極まる疲労を休めようとの段取り。
かくて山科の広野原――へ来たが、まだ月光酣わなる深夜なのです。その広野原へ来て――山科には特に広野原というべきところはないけれども、彼のさまよう世界のいずこも広野原。そこへ来るとふらりふらり辿って来た足を、ものうげに薄野原の中にとどめて、ふっと後ろを顧みると、東山を打越えて見透し、島原の灯が紅い。