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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

「殿様、うまくひとつ書いてやっておくんなさいましよ、贔負分にね」

「ふーん」

神尾は鼻であしらいながら、筆立の中から木軸の大筆を取って、ズブリと大硯の海の中へ打ち込みました。

「無駄を言うな」

「だって、後見がうまくなけりゃ太夫が引立たねえや。さあさあ、殿様の曲芸、米様の筆を以て、勘亭流の看板をお書きになろうとする小手先の鮮かなところに、お目をとめられてごろうじろ」

「馬鹿」

神尾は大奴の無駄を軽く叱って、板の面を目分量して字配りを計りながら、硯の海で筆をなやしておりましたが、やがて板へぶっつけに、「江」という字を一息に書いてしまいました。

「うまい!」

大奴が半畳を入れると、神尾は苦笑いして、

「気が散るからだまってろ」

と言って、今度は息を抜かずに筆をふるって、縦横に書き上げたたて看板の文字は、「江戸の花 女軽業」の七文字であります。

「太夫、御苦労」

大奴は硯の下にあった団扇を取って、神尾を煽ぎ立てました。

書いてしまった七文字を神尾は、また右見左見してながめています。文字は決して悪い出来ではありません。文字の示す通り、女軽業の看板としては勿体ない書風であります。