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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

お角も、車井戸で水を汲んでいる者があることを気がついていました。車井戸の音が嫌いだという神尾の心理状態を、怪しまないわけにはゆかないが、これも酒の上での我儘が出たものと思って、神尾の言うことを軽く受け流しています。

それにも拘らず、裏の車井戸はキリキリと鳴っています。キリキリと鳴ってはザーッと水をあける音がします。

「まだ水を汲んでいる奴がある、早く行って差止めてしまえ」

「水を汲んでは悪いのでございますか」

「水を汲んで悪いとは言わん、車井戸を鳴らしてはいかんのじゃ」

「それでも、車を鳴らさずに、あの井戸の水を汲むわけには参りますまい」

「拙者はあの井戸の音が嫌いじゃ、今時分あれを聞くと堪らん、なにも拙者の嫌いな車井戸を、ワザとああして手繰廻すには及ばんじゃないか」

「それは御前の御無理でございます、何か御用があるからそれで、水をお汲みなさるんでございましょう、御前をおいやがらせ申すために、水を汲んでいらっしゃるのではござんすまい」

「あれ、まだよさんな。よし、拙者が行って止めて来る」

神尾主膳は刀を提げて立ち上りました。その心持も挙動も、酒の上と見るよりほかには、お角には解釈の仕様がありません。