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だいぼさつとうげ

大菩薩峠5

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠5(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,120 字 · 516 頁

青空文庫

扱帯の一端を自分の手に持って橋の上を歩きはじめました。お君は、やはり気が変になっています。草も木も眠っているのだから、何人もこの主従の異形な夜行を見てあやしむものはありません。

少しばかり歩き出した時に、悄々と歩いていたムク犬が後ろを見返りました。

「何をしているの、早く歩かなければ夜が明けてしまいます」

お君は扱帯の端を強く引張りました。けれどもムク犬にはこたえませんでした。

「早くお歩きよ、夜が明けると少し都合が悪いことがあるんだから」

それでもムク犬は動きませんでした。

「あれはお前、向う両国で、左へ曲ると駒止橋、真直ぐに行けば回向院、それを左へ曲ると一の橋、一の橋を渡らないで竪川通りを真直ぐに行くと相生町」

お君はこんなことを繰返して、ぼんやりとこし方をながめながら立っていました。

「おや、誰か人が来るのだね、人が来るからお前はそれを待ってるのかい」

この夜は真夜中過ぎとはいえ、月のない夜ではありませんでした。鎌よりは少し幅の広い月が、たしか愛宕の山の上あたりに隠れていなければならない晩でありました。だから九十六間の両国橋の上に物の影があるとき、それが全く認められない程の晩ではありません。