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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁

青空文庫

兵馬に浴びせていた可愛ゆい言葉を、兵馬が去ればまたほかの人に惜気もなく浴びせる。兵馬を可愛がった情けを、また今宵はほかの人に許してしまうのだ。さりとては、あんまり浅ましいと兵馬は帰りがけに、泣きたいほどに悶えました。

この苦痛に翻弄されて、へとへとになって相生町の老女の家へ帰って見ると、自分の部屋に人が一人いて、無遠慮に兵馬の机へ寄りかかって物を書いています。

「おお南条殿、いつお帰りになりました」

それは南条力でありました。

「やあ宇津木君、どこへ行っていた」

どこへ行っていたと言われた兵馬は、

「つい、そこまで」

と勢いのない返事です。

「君、面の色がよくないぞ」

南条はその爛々たる眼で、兵馬の面をジロリと見て、

「君が意気銷沈していると娘たちが心配する、それに君、あまり外泊はせん方がよろしいぞ」

「…………」

兵馬はグッと詰まりました。

その時に南条力は、書きかけていた筆をさしおいて、膝を兵馬の方に向き直らせ、

「君のことだから、そうばかげたこともすまいけれど、はたで見ているものは相当に気を揉むらしい。気を揉ませぬようにしてやってくれよ、周囲の者に気を揉ませるのがいちばん毒じゃ」