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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

線上閱讀中里 介山《大菩薩峠6(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,112 字 · 362 頁

青空文庫

九

暫くして手製の大炬火を持った神尾主膳は、土蔵に燃えている火を持って来て、本宅の戸と、障子と、襖と、唐紙へうつしはじめました。

そこで土蔵と本宅とが相呼応して燃え上ります。いかに燃え出しても、この家にはそれを消そうとするものがありません。附近の人々も大方は狐の踊りに出かけているところであります。ようやく人が騒ぎ出して火消が駈けつけた時分には、土蔵も、本宅も、大半は焼けて手のつけようがありません。暁方近くなって、お絹をはじめ踊りに出た連中が帰って見た時分には、土蔵も、本宅も、物置の類も、すっかり焼け落ちていました。

九

王子稲荷の衣裳榎から、狐の踊りが流行り出したということに刺戟されて、上州の茂林寺から狸の踊りを繰出して、その向うを張ろうというのはばかばかしい凝り方です。

人間はそれぞれ負けない根性に支配されて、負けない根性のために、滑稽なる競争と、無用の濫費がつづけられてゆくのが人間の歴史の大部分です。

茂林寺の狸踊りは、土地の若い者から始まったということだが、おそらくそうではあるまい。江戸のものずきが行って、あらかじめお膳立てをしておいて、それを上州名物の名で、江戸へ繰込ませようという寸法であるとは受取れる。