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だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
線上閱讀中里 介山《大菩薩峠7(だいぼさつとうげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 242,044 字 · 477 頁
人通りの少ない時、明りのしているお長屋の前に立って、駒井は暫く様子をうかがっていましたが、
「一学、一学」
と駒井は低い声で呼びました。
お長屋のうち、ここだけが明りがしていたから、その明りをたよりに呼びかけたところが、
「ナニ、誰じゃ、どなたでござる」
中では、やや狼狽したものの返答ぶりです。
「一学、おるか」
「へえ……」
このお長屋のうちで、ただ一軒だけ燈火をつけて夜業をしていたのが、思いがけなく外から呼ばれて驚きました。
この屋敷の広さは、誰が見ても三四千坪以上、周囲にはお長屋があって、表は長屋門、左右には黒板塀、書院、表座敷、居間、用部屋、使者の間、表玄関、内玄関、詰所詰所、庭があり、林があり、築山があり、茶畑まであって、三千石以上の旗本の屋敷としては総てが備わっているが、主人がいない。
主人のいない屋敷は荒れるにきまっている。たとい留守を預かるほどの者が心がけがよくって、見苦しからぬよう手入れを怠らぬにしたところで、主人を持たぬ家は、その鬱然たる生気を失うにきまっている。
駒井能登守が、すでにこの屋敷を離れてかなりの日数になる。まだ見苦しいほどには荒れていないが、なんとなく痛々しい空気が漂うているのはぜひがない。