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てんしゅかくのおと

天主閣の音

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《天主閣の音(てんしゅかくのおと)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 38,941 字 · 79 頁

青空文庫

成瀬隼人正、竹腰山城守、石河佐渡守、志水甲斐守、渡辺飛騨守の年寄衆は、額を集めて相談した。

「これは何うも大事件だ。江戸の町奉行が隠密となり、直々他領へ入り込むとは、曾て前例の無いことだ。これが普通の隠密なら、捕えて殺して了えば可いが、大岡越前守とあって見れば、そういう乱暴な手段も執れない。若松屋の番頭の立聞きに由れば、殿に謀叛の疑いがあり、御金蔵に貯えた黄金の額を主として調べに来たのだというから御金蔵の黄金を他所へ移しそれから逆に使者を遣わし、越前守を城中へ召し、夫れとなく御金蔵の内を見せ、安心させるのが可いだろう」

年寄の意見は斯う決まって主君へ言上することにした。

この日宗春は奥御殿で、快い眠りに耽っていた。

その傍にお半がいた。これも矢張り眠っていた。

薄煙が部屋に立ち迷っていた。

四辺に散らしてあるものは、眠薬の壺と吹管であった。部屋には最う一人人がいた。それは他ならぬ香具師であった。お伽衆だという所で、自由に奥御殿へ出入ることが出来た。彼一人だけ眼覚めていた。二人の寝姿を真面目に見守り、膝に手を置いて考えていた。

襖の向うから声がした。