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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《娘煙術師(むすめえんじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 頁

青空文庫

「それが聞きたい、申してみやれ?」

「はい、禁裡様にござります」

「…………」

りっぱな公卿はその言葉を聞くと、襟を正して粛然としたが、

「改めてそちに訊くことがある。『くもるとも、なにか怨みん、月今宵、晴れを待つべき、身にしあらねば』――この和歌の意味を存じておるかな?」

「存じておりますでござります」

「和歌の詠者も存じておるか?」

「存じておりますでござります」

「どのような場合に詠ったものか、その点もそちは存じておるかな?」

「存じておりますでござります」

「では改めてもう一度訊くが、そちとこの和歌の詠者とは、有縁のものと思われるが、それに間違いはあるまいな」

「有縁のものにござります」

「さようか」といったがりっぱな公卿は、顔をゆすってうなずいてみせた。「所司代の番士の長屋の土塀へ、楽書きをした心持ちも、これでおおよそわかって来た。反抗的に書いたのであろう?」

「御意の通りにござります」

「うむ」というとりっぱな公卿は、また顔をゆすってうなずいてみせたが、「そち、この麿を存じているかな?」

「徳大寺様と存じまする」

「いかにも」と徳大寺大納言家は、それを聞くとまたもやうなずいてみせたが、「麿とその歌の詠者とは、昔多少の縁があった。