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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《娘煙術師(むすめえんじゅつし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 頁

青空文庫

お粂は無言で頭を下げた。と、その時紋也がいった。

「京丸に埋めました金子と申すは?」

「あれか、宝暦の事件の際に、同志が諸方から集めた金子だ。……これを活用して事を挙げるのが、我々の今後の仕事なのだ。さて、そろそろ出かけるとしよう」

老儒者の乗った駕籠を取り巻き、一団は先へ歩き出した。荷物を背負っている人足などもあった。何がはいっているのであろう? 新しい軍器の模型かもしれない。

年が代わって春となった。お狂言師の泉嘉門の、花の咲いている裏庭で、恋語りをしている男女があった。北条左内とお菊とである。

「父も性質が変わりました」といいいい左内は微笑をした。

「去年の初秋からでございますよ。にわかにおだやかになりまして私の申す意見などにも、耳を傾けるようになりました。よく口癖に申したりします。『事というのは齟齬するものだ。俺はこれからは我は張らぬよ』このように申すのでございますよ」

鶯の啼き声が聞こえて来た。小舞物をうたう声などもした。

「父もおだやかになりましたし、元気にもなりましてござります。お聞きなさりませ『柳の下』を、あのように朗らかにうたっております。