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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁
「ぼくはやっぱり青二才なんですね、ええ、自分でもそれがよくわかりましたよ」
「謙遜は美徳の一だ」
「ぼくはずいぶんねばったんですが断わられた、先生が出馬なさると資金調達はつうかあじゃありませんか、脱帽します」
これは人格の問題であり、自分はもっともっと修業しなければだめだ、と主張した。裏返すまでもなく、資金調達を先生に押しつけるつもりなのだろう。先生はそんな言葉の裏などに気づくような小人ではないから、塾生の告白を尤もであると認め、当分のあいだ自分が奔走しようと受けあった。
或る日、先生はまた古畳の上から、いつかと同じヘアーピンを拾いあげ、こんどは不審そうに、つくづくとそれを眺めた。
「ちょっと、きみ、八田くん」と先生は塾生を呼んでそれを見せた、「これはなんだね」
さあといって、八田青年は首をかしげた。眼の中に狼狽の色があらわれたけれど、先生はそんなことには気がつかなかった。
「このあいだも、これと同じ物が落ちていたんだが」
先生は二た股になった細いその物を、拇指と食指で持って、なにげなく匂いを嗅いだ。
「あぶらっ臭いな」と先生は云った、「いったいなんだろう、誰がこんな物を落していったんだろう、なんに使うのかなこれは」