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きせつのないまち
季節のない街
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《季節のない街(きせつのないまち)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 201,379 字 · 394 頁
二人ともそんなとしではなくなっているし、京太は酒が専門であり、よそで飲むにも女っけのある店へは決してはいらない。
女っ臭いのはなにより酒をまずくする、というのが彼の口癖であった。――また、彼が中学教師だったという感じはあって、妻やかつ子に対しても、乱暴なことをしたりどなりつけたりするようなためしはなかった。――したがって、おたねの従順さは生れついた性分であろうが、貧しい家計のやりくりと休む暇のない内職稼ぎに追われながら、ぐちをこぼしたこともないし、亭主にはたらいてくれといったこともなかった。
「世間にはくらしに困って、親子心中をする者がいくらもあるんだよ、可哀そうにね」おたねは仕事をしながら、かつ子によくそういった、「そういう人からみれば、生きてゆけるだけまだあたしたちは仕合せさ、ほんとに、親子心中する人の気持はどんなだろうね」
かつ子は黙ったまま、そっと聞えないくらいに低く太息をつくか、仕事の手を止めて、古畳の一点を見まもるかするだけである。
かつ子ほどこまめにはたらく者もないし、かつ子ほど口かずの少ない者も珍しかった。
生れてすぐ引取ったということだし、おたねには血を分けた姪だから、しんみの親子と変らない情愛がかよっている筈である。