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どんぐり
寺田寅彦随筆集 第一巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第一巻(どんぐり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 203,161 字 · 412 頁
そのまん中の土が妙に動くと思っていると、すうと二葉が出て来た。それが見るまに大きくなり、その中心から新しい芽が泉のわくようにわき上がり延び上がった。延びるにしたがって茎の周囲に簇生した葉は上下左右に奇妙な運動をしている。それはあたかも自意識のある動物が、われわれには不可知なある感情を表わすためにもがいているようにも思われ、あるいはまた充実した生命の歓喜におどっているようにも思われた。やがて茎の頂上にむくむくと一つの団塊が盛り上がったと思うとまたたくまにその頭がばらばらに破れて数十の花弁が花火のように放散した。そして絶大な努力を仕遂げてあえいででもいるように波打っていた。そこで惜しいところで映画はふっと消滅してしまった。
私はなんだか恐ろしいものを見たような気がした。つまらない草花がみんな「いきもの」だという事をこれほど明白に見せつけられたのは初めてであった。
日常見慣れた現象をただ時間の尺度を変えて見せられただけの事である。時の長短という事はもちろん相対的な意味しかない。蜉蝣の生涯も永劫であり国民の歴史も刹那の現象であるとすれば、どうして私はこの活動映画からこんなに強い衝動を感じたのだろう。