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からすうりのはなとが
寺田寅彦随筆集 第三巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第三巻(からすうりのはなとが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 213,804 字 · 425 頁
数の少ないのはいいとしても、花らしい花の絵の少ないのにも驚嘆させられる。多くの画家は花というものの意味がまるでわからないのではないかという失礼千万な疑いが起こるくらいである。花というものは植物の枝に偶然に気まぐれにくっついている紙片や糸くずのようなものでは決してない。われわれ人間の浅はかな知恵などでは到底いつまでたってもきわめ尽くせないほど不思議な真言秘密の小宇宙なのである。それが、どうしてこうも情けない、紙細工のようなものにしか描き現わされないであろう。それにしても、ずっと昔私はどこかで僧心越の描いた墨絵の芙蓉の小軸を見た記憶がある。暁天の白露を帯びたこの花のほんとうの生きた姿が実に言葉どおり紙面に躍動していたのである。
ことしの二科会の洋画展覧会を見ても「天然」を描いた絵はほとんど見つからなかった。昔の絵かきは自然や人間の天然の姿を洞察することにおいて常人の水準以上に卓越することを理想としていたらしく見える。そうして得た洞察の成果を最も卑近な最もわかりやすい方法によって表現したように思われる。しかるにこのごろの多数の新進画家は、もう天然などは見なくてもよい、か、あるいはむしろ可成的見ないことにして、あらゆる素人よりもいっそう皮相的に見た物の姿をかりて、最も浅薄なイデオロギーを、しかも観者にはなるべく