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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁

青空文庫

野菜類は現場で得られるものは利用する。カラフトではいろいろな植物を片端から試験的に食ってみた人もある。渓流で小ざかなをつかみ取りにしたり、野獣を射止めて思わぬ珍味にありつくこともおりおりはあるそうである。

北海道では熊におびやかされたり、食糧欠乏の難場で肝心の貯蔵所をこの「山のおじさん」に略奪されて二三日絶食した人もある。道を求めて滝壺に落ちて危うく助かった人もある。暴風にテントを飛ばされたり、落雷のために負傷したり、そのほか、山くずれ、洪水などのために一度や二度死生の境に出入しない測量部員は少ないそうである。それにもかかわらず技術官で生命をおとした人はほとんどないというのは畢竟多年の経験による周到な準備と注意によるものであろう。

技術官に随行する測夫というのがまた隠れた文化の貢献者である。ただ一人山頂の櫓に回照器(ヘリオトロープ)を守って、時々刻々に移動する太陽の光束を反射して数十キロメートルかなたの観測点に送る。それには多年の修練によるデリケートな神経と筋肉の作用を要する。この測夫の熟練のいかんによって観測作業の進捗が支配されるのである。ある時向こうの山頂の回照器がいつまで待っても光を送らない。