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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁
映画雑感(Ⅳ)
一 商船テナシティ
このジュリアン・デュヴィヴィエの映画は近ごろ見たうちでは最もよいと思ったものの一つである。何よりも、フランス映画らしい、あくの抜けたさわやかさが自分の嗜好に訴えて来る。
汽車でアーヴルに着いてすっかり港町の気分に包まれる、あの場面のいろいろな音色をもった汽笛の音、起重機の鎖の音などの配列が実によくできていて、ほんとうに波止場に寄せる潮のにおいをかぐような気持ちを起こさせる。発声映画の精髄をつかんだものだという気がする。これと同じようなことをドイツ人日本人がやればまずたいていは失敗するから妙である。
二人の若者の出帆を見送ったイドウ親爺とテレーズとが話しながら埠頭を帰って来る。親爺が「これが運命というものじゃ」というとたんに、ぱっと二人の乗って行った船の機関室が映写されて、今まで回っていたエンジンのクランクがぴたりと止まる。これらはまねやすい小技巧ではあるがやはりちょっとおもしろい。
バスチアンとイドウとが氷塊を小汽艇へ積み込んでいるところへテレーズがコーヒーの茶わんを持ってくる。バスチアンがいきなり女を船に引きおろしておいてモーターをスタートする。