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ならしげざっぴつ
小出楢重随筆集
小出 楢重
線上閱讀小出 楢重《小出楢重随筆集(ならしげざっぴつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 334,351 字 · 657 頁
それから芝居の雰囲気を増す原料の一つである光景は、幕が開いてしまっているのに、小用や何かで立った男女老若が、ぞろぞろばたばたと花道を走る事だ。
昨夜も判官は切腹に及んで由良之助はまだかといっている時、背広服の男が花道を悠々と歩いて、忠臣蔵四段目をプロレタリア劇の一幕と変化させた事だった。
全く幕が開いた暫らくなどは舞台では何が始まっているのか見えない位のこんとんさである。姉えやん、光っちゃん、お母ん、はよおいでんか、あほめ、見えへんがな、すわらんか、などわいわいわめいている。
その喧噪の花道を走る芸妓の裾に禿頭は撫でられつつ、その足と足との間隙から見たる茶屋場などは、また格別の味あるものとなって、深き感銘とよき陶酔を老人に与えたであろうかも知れない。
とにかくも、先ず芝居はどうであろうとも、芝居の中の浮世の雑景は、近代の様式による劇場のとりすましたるものとは違って、雑然として見るべきものが甚だ多い処に、私も芝居以上の陶酔を持つ事が出来る気がする。
なるほど、徳川時代か何かに生れて、のらりくらりと芝居の桝の浮世の中へ毎日入りびたっていたりする事は、悪くはない事だったであろう。