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こざくらひめものがたり

小桜姫物語

浅野 和三郎

線上閱讀浅野 和三郎《小桜姫物語(こざくらひめものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,097 字 · 267 頁

青空文庫

『さて』とお爺さんは、しばらく経ってから、いと真面目な面持で語り出でました。『俺の役目はここまで汝を案内すればそれで済んだので、これから先きは汝一人で行くのじゃ。あれ、あの入江のほとりから、少し左に外れたところに見ゆる真平な街道、あれをどこまでもどこまでも辿って行けば、その突き当りがつまり竜宮で、道を間違えるような心配は少しもない……。又竜宮へ行ってからは、どなたにお目にかかるか知れぬが、何れにしても、ただ先方のお話を伺う丈では面白うない。気のついたこと、腑に落ちぬことは、少しの遠慮もなく、どしどしお訊ねせんければ駄目であるぞ。すべて神界の掟として、こちらの求める丈しか教えられぬものじゃ。で、何事も油断なく、よくよく心の眼を開けて、乙姫様から愛想をつかされることのないよう心懸けてもらいたい……。では俺はこれで帰りますぞ……。』

そう言って、つと立ち上ったかと思うと、もうお爺さんの姿はどこにも見えませんでした。

例によりてその飽気なさ加減と言ったらありません。私はちょっと心さびしく感じましたが、それはほんの一瞬間のことでございました。私は斯んな場合にいつも肌から離さぬ、例の母の紀念の懐剣を、しっかりと帯の間にさし直して、急いで砂丘を降りて、お爺さんから教えられた通り、あの竜宮街道を真直に進んだのでした。