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ろうじゅうのめがね
小笠原壱岐守
佐々木 味津三
線上閱讀佐々木 味津三《小笠原壱岐守(ろうじゅうのめがね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 57,249 字 · 115 頁
流行暗殺節
一
「足音が高いぞ。気付かれてはならん。早くかくれろっ」
突然、鋭い声があがったかと思うと一緒に、バラバラと黒い影が塀ぎわに平みついた。
影は、五つだった。
吸いこまれるように、黒い板塀の中へとけこんだ黒い五つの影は、そのままじっと息をころし乍ら動かなかった。
チロ、チロと、虫の音がしみ渡った。
京の夜は、もう秋だった。
明治二年! ――長らく吹きすさんでいた血なまぐさい風は、その御一新の大号令と一緒に、東へ、東へと吹き荒れていって、久方ぶりに京にも、平和な秋がおとずれたかと思ったのに、突如としてまたなまぐさい殺気が動いて来たのである。
五人は、刺客だった。
狙われているのは、その黒板塀の中に宿をとっている大村益次郎だった。――その昔、周防の片田舎で医業を営み、一向に門前の繁昌しなかった田舎医者は、維新の風雲に乗じて、めきめきと頭角を現わし、このとき事実上の軍権をにぎっている兵部大輔だった。軍事にかけては、殆んど天才と言っていい大村は、新政府の中枢ともいうべき兵部大輔のこの要職を与えられると一緒に、ますますその経綸を発揮して、縦横無尽の才をふるい出したのである。