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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁
それも、花売娘や、売笑婦をさらってくることなら誰にだって出来るのだ。しかし、今や、わが中野秀人は、お伽噺の中の王女を娶って国際恋愛の範を垂れようとしているのではないか。これだけは誰にも出来るという芸当ではない。
第一、貨物船というのが、すばらしくロマンチックではないか。何故、貨物船に乗るんだろうという意見に対して私は堂々と答えた。「そりゃ、君、あいつは文なしだからさ、先ず自分の恋人を日本へつれてくる前に、じっくりと貧乏に馴らそうという遠大な抱負にちがいないよ」
私の眼には朝の光りに照らしだされた広い海面が見える。キラキラと波をはねかえして一艘の船がうかびあがる。恋を載せた貨物船である。
秀人は、しかし、一生を賭けた冒険をやってのけたというだけで、例えば彼が無事に日本へ帰り着いたとしても兄の正剛がこれをこころよく迎えてくれるかどうかは疑問である。
私たちは、まったく足が地に着かないような不安定な、そわそわした思いで彼の帰るのを待っていた。
何しろ婚約の相手が相手だけに、中野家も対世間体に対する処理の問題について、もっとも苦慮した様子である。そういう考え方を推し進めてゆけば、秀人のとった態度は、あまりにも性急であり、無謀でもあった。