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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁

青空文庫

「あなたは理窟がお上手なのね。わたしは一度だって、あなたとわたしとを別々のものにして考えたことなんかないのよ。それだのにあなたは何時もわたしのことと御自身のこととの間にはっきりとした境界をつけていらっしゃる。――わたしから離れよう離れようとなさるのがよくわかるわ。それを考えるとわたしはほんとにあなたにお気の毒でならないと思うのよ。ね、あなた。わたしたちはもうおしまいになってしまったのね」

緒方新樹はもう我慢がならなくなった。彼は自分の頭の中の冷静が次第に乱れてくるのを感じた。A子の声が耳のそばで挑みかかるようにがんがん鳴りはじめた。彼の頭の中をA子との結婚生活が始まってからの数年間の記憶が入れ乱れて通っていった。その回想はすべて不快で濁っている。一瞬間、彼は自分が非常に不誠実で狡猾な、無価値な男のように思われてきた。すると、A子とわかれることが、何かしら献身的な行為のように思われてきたのである。そうだおれはわかれてやろう。おれはほんとうに一人きりになろう。――彼はわざと身体を反対側にねじ向けた。陽に輝いた白い砂浜を控えた海が彼の頭の中に現われてきた。