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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁
「玄作、心配するな。――今朝、俺に局長の辞令が下ったんだ。葬式が済んだらすぐお前は東京へ帰れ」
兄の言葉は底の方で顫えていたが、その咳きこむような調子の明るさが押えきれない彼自身の喜びを象徴しているように見えた。その言葉はわたしの心にかすかな反撥を感じさせた。
わたしは地面を見詰めたまま返事をしなかった。強烈な初夏の陽ざしがわたしの涙の上に溶けた。
「思ったほどごたごたもなくて済みそうだ。親父が出来るだけのことをしといて、死んでくれたのだ。――しかし、これから何が起るかわからん。家のことなんか心配しなくていいからお前は早く上京しろ。そして一日も早く試験を受けてしまうんだ」
兄の言葉は急に沈んだ調子を帯びてきた。
「試験って?」
「高等文官さ」
兄の声は疳高く尖って聞えた。わたしはそれきり黙ってしまった。兄は四、五年前に抱いていた彼自身の夢をわたしによって実現させようとしているのだ。わたしの心は無意識のうちに、わたしの東京の生活について何事も感づいていない彼に対してかすかな軽蔑を感じはじめた。わたしは父を欺いていたのだ。わたしはW大学の法科に入ったのであるが半年足らずのうちに文科に籍を変えていた。