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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
布置から言えば、天蝎宮の心宿に似ている。そして其第一星たる可き山は、どうしても三宝山で、中央のアンタレスの位置に在る甲武信岳では無い。三宝山の名は初めて甲武信岳に上った時、案内者であった梓山の猟師油井安十郎が教えたので、念の為に三方と書くのかと聞き質したら、三つの宝と書くと答えた。其時は別に深くも究めず、同行の南日君も三宝山として曾て『山岳』誌上で紹介した。後考に拠れば、三宝は矢張三方から来たものらしく、梓山で甲武信岳を三方山と唱えていたことが、三度目の登山の時に判然した。然るに甲武信岳なる名称が普く行われるようになって、三方の名は迷子になった形であった。安十郎は猟師であるが、元は区長も勤めて相当に学問のある男であると、白木屋(梓山の旅舎)の主人も話した。それで三方山という総称の中に含まれていた此山を、新に三宝山として教えたのではあるまいかと思われる。或は安十郎が区長時代に、三宝山の名を村の記録に書き入れたか、どうか、夫は知らない。また本人の死去した今日、詳細に聞き糺すことも不可能になった。が、どの道甲武信岳の名が既に確定した以上、三方を三宝と改めて隣の山に移しても、それが通用する上は差支あるまいと信ずる。