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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
ことによると人跡未到の地かも知れぬ、よし夫なら私達が真先に蹈み込んでやろうという考が心の中に閃めいた。然し様子が知れないので愚図愚図している間に三年は過ぎて仕舞った。折角手を付け始めた秩父奥山の跋渉を他人に先鞭を着けられてしまうのも残念であるというので、今年南日君が上高地へ行くというのを幸に、連れ立って先ず雁坂峠から甲武信岳まで縦走し、天候其他に差支がなかったならば、更に金峰山まで縦走しようと相談が決って、七月二十二日夜九時飯田町発の汽車で東京を出懸けた。
今年の三月下旬に南日君は中村君と同道して、丹波山村から大菩薩岳に登り、尾根伝いに柳沢峠へ出ようとして、誤って大黒茂谷に迷い込み、一夜を雪の洞窟内に過したが、防寒具と食糧との用意を欠いた為に、危い目に遭った苦い経験から、用心深いこと夥しい。が、お蔭で荷が重くなったのには大に閉口した。
二十三日。午前四時過ぎに塩山に着いて、荷物を直すとすぐ出懸る。町の真中頃で柳沢峠への道と別れ、向岳寺の前を通って井尻村にさし懸った頃には、停車場を離れる時からポツポツ落ちていた雨が大分降り出して来た。名高い恵林寺は知らずに通り過ぎ、藤木村最終の一軒家を後に見なすと道は清冷な流を湛えた用水堀に沿うて、笛吹川を左下に見ながら、沢胡桃、栗などが並木のように列んでいる間を通って行く