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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
此河原は周囲を峻しい山々に取り巻かれた峡谷の中としては、思の外に打ち開けた処で、劒沢は南のはずれを一段深く穿貫しているから、恰も河成段丘のような観がある。水楊や樺や大杖などが茂りに茂って、ここは若々しい青葉の緑が流れている。南に面した岩屋の背後は東側が四、五尺の高さに深く刳れて、十余人は楽に泊れる洞窟を形造っている。稍や薄暗い感じはあるが如何なる暴風雨をも凌ぐことの出来る完全なる泊場所である。更に其奥の方にも四、五人は泊れる岩窟があるそうだ。長次郎が何処からか山独活と根曲り竹の筍を採って来る、晩にそれを味噌汁に作って香りの高い豊脆な味を賞美した。暮方の空は青く澄み初めて、夜は満天の星が痛いような光を投げ出す、折々流星が長い尾を曵いて黒部別山の上を飛んだ。
中村君の話に拠ると、音沢村の佐々木助七は吾々が劒沢と称している沢のことを西五稜(宛字吉沢君に拠る)の沢と呼び、小窓三窓両渓の合流北股(吉沢君に拠る)を劒沢と云い、之をツルガザワと発音しているそうである。由て思うに大山村の人夫が鶴ヶ御前(宛字、登山地図劒岳号参照)と称するは即ち劒ヶ御前にして、元と劒岳の尊称であったものが、いつの間にか転移して其前面に続く二千七百七十六米の峰名となったものであろう。