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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
また、ときとして、こぶしをつくって、刀身のあちこちを、かるく打ったのである。
すると爪にはじかれたうす刃は、かすかに、微妙なひびきをつたえる。こぶしでたたかれた刀身は、その箇所によって、ふとく細く震動して、単調なようで複雑な、複雑なようで単調の音波を、空へむかって発するのだった。それを、龍造寺主計は、早く、おそく、強く、よわく、上に、下に、いろいろに、刀身を握ったり、指をかけたりして、たくみに調節しているのである。
龍造寺主計は、そうして文字どおりに、剣を弾じているのだった。剣は、打々と、錚々と、きつきつと、あるいはむせぶがごとく、あるいは訴うるがごとく、あるいは放笑するがごとく、あるいは流るるがごとく、立派に、弾奏の役目をつとめているのである。この、龍造寺主計の刀は、ただ非常に薄いばかりでなく、何か特別のつくりででもあるのであろうか。
龍造寺主計は、はじきながら、打ちながら、刀身の上下を押えて、震幅を加減し、うっとりと眼をつぶってまた歌い出していた。
「きんらい酒にあてられて、起つねにおそし。臥して南山を見て、旧詩をあらたむ」
お高は、笑いだしていた。