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こうせつきょうほうずえ
巷説享保図絵・つづれ烏羽玉
林 不忘
線上閱讀林 不忘《巷説享保図絵・つづれ烏羽玉(こうせつきょうほうずえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 365,120 字 · 728 頁
守の屋敷に預けられて評定所の糺問を受けているのだった。この詩は、豪放磊落な三樹が、終天の恨みをこめ軍駕籠で箱根を越えるときに詠じたもの、当時勤王の志士たちは争ってこれを口ずさんでいた。
「頼先生始め同士先輩の上を思えば、時世時節とは申せ、お痛わしい限りじゃ。拙者は、幕府の仕儀が一から十まで気にいらぬ。徳川の流れに浴する身ではあるが、その水も濁ったわい。なあ、貴殿はそうはおぼしめされぬか」
侍はちらと守人を見る。守人にも油断はない。
「さようなこと拙者はいっこうに存じ寄りませぬ」
「いんやいや、胸底おのずから相通ずるものあり、警戒は御無用」
「と申したところで――」
「赤鬼め、長いことはあるまい」
赤鬼とは大老井伊のこと。守人はどきっとして口をつぐんだ。これは――うっかりできないぞ。
雨がしげくなった。
二人は黙って二、三間歩いた。
「貴殿はいずれの御藩かな。それとも御浪士か」
こうききながら、侍は、手にした提灯の灯を、それとなく何度も守人の袖へ向けて、定紋を読もうとしている。
どっこい!
そこらにぬかりはあるものか。
このとおりちゃあんと無紋を着ている。
「水戸が彦根殿の首をほしがっておるそうじゃが、貴殿水戸ではあるまいな」