輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
線上閱讀平林 初之輔《平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕(あるたんぼうきしゃのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,247 字 · 229 頁
私は夜が更けて、動物園の中を歩いても絶対安全になる時刻を見すまして、この熊笹の中へ移転しようと前から計画していたのだ。というのは一晩中橋の下に立ちつくしているわけにはゆかないが、昼の明かりのあるうちに熊笹の中へはいっているとちょっと身動きしても発見されそうな心配があったからだ。
私が格好な場所まで這って行って、ごろりと笹の中に身を横たえようとしたとき、だしぬけにうしろの方から、低い、けれども心臓を凍らせるような鋭い声が聞こえた。
「おい!」とたった一言である。
私は膝頭が不意にがたがた慄えた。意外なこともずい分あるがこれほど意外なことがあろうか。こんな所に既に先客があると誰が想像するものがあろう。うしろをふり向くと二間ばかりはなれたところに、一人の男が中腰になって、私の胸のあたりへ短銃の銃口を向けている。顔はよくわからぬが、どこかで見たことのある人のようにも思われる。しかし、どこで見たのか、誰なのかははっきり思い出せない。
「鞄を出せ!」男はまた低いしっかりした声で言った。
「鞄? どんな鞄です?」と私は案外落ちついて反問した。
吃驚が度を過すと、人間は不思議にまた落ちついてくるものと見える。