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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
線上閱讀平林 初之輔《平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕(あるたんぼうきしゃのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,247 字 · 229 頁
右のうちで、筆者が圏点を付した部分は、柴田の性行に、あまりにもよく符号しているではないか。安田は、柴田に対してずっと以前から殺意を抱いていたものに相違ない。林といい、柴田の未亡人といい、その他、柴田の性行をよく知る者はことごとく柴田の死をむしろ願い喜んでいる。安田はそれらの人々の心中に潜在した願望を、自ら犠牲となって実行したのである。彼が、犯行の現場に集まった群集に対して、警官の到着前に、興奮して演説しようとしたのは、このことを裏書きしている。あの時もし警官の到着が五分もおくれたら、彼は、あの場で自分の犯行を自白してしまったであろうと私は信ずる。
安田はラスコリニコーフよりも強かった。しかも、彼は邪悪漢柴田を裁断しただけで、外の人には何の迷惑をもかけていない。それどころか、近所の人々はみな柴田の変死を喜んでいる形勢がある。安田の心中はきっと満足であったろうと私は忖度する。けれども今回彼がとつぜん郷里へ帰ろうとしたのは、恐らく、自分の犯行を父母に告げて、その後男らしく自首して出る決心であったのかもわからぬ。いかに意志の強い人間でも、自己の心中の秘密と戦ってゆくことは非常に困難であっただろうから、しかもそう解釈すれば、彼がとつぜん七年振りに、時もあろうに雪で埋まっている郷里へ帰ろうと決心したわけも説明がつく