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あるたんぼうきしゃのはなし
平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕
平林 初之輔
線上閱讀平林 初之輔《平林初之輔探偵小説選I〔論創ミステリ叢書1〕(あるたんぼうきしゃのはなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 113,247 字 · 229 頁
四月十九日
「あまり突然で僕は自分でも自分が信じられなかった、だが今はっきりとわかったから白状しておく」
妾はあの人の全身が、その刹那、そっくり、そのまま氷になってしまったような気がした。これほど、冷酷な、これほど惨虐な人間がまたとあるだろうか。妾の全身はポプラの葉のようにふるえた。
「どうにも仕方のない運命だから諦めて、おやすみ、考えたってよい思案の出ることじゃないから、今この場でふっつり諦めて、このろくでなしの、野良犬のような僕を許して下さい!」
妾はもうそれ以上、鋼鉄の機械か何かから出てくるような、無慈悲な言葉をきいていることはできなくなった。両手でハンカチを眼にあてて、妾はだまって下へ降りて行った。
四月十九日
昨夜はむろん妾は一睡もできなかった。涙がとめどなく出てくるかと思うと、急に涙が乾いて、憤怒のために眼がつり上がってくる自分を感じた。妾は気が狂うのではないかと思って、その時はっとしたのをおぼえている。夜半頃に急に思い出して妾はしげしげと二人の子供の顔を眺めた。その時も、急に頭の具合がどうかなってしまいはしないかと思った。
妾は夜が明けるのをまって起きぬけに、あの人の室へはいって行った。