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『こうじえん』じじょ
『広辞苑』自序
新村 出
線上閱讀新村 出《『広辞苑』自序(『こうじえん』じじょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 3,278 字 · 7 頁
いまさら辞典懐古の自叙でもないが、明治時代の下半期に、国語学言語学を修めた私は、現在もひきつづいて恩沢を被りつつある先進諸家の大辞書を利用し受益したことを忘れぬし、大学に進入したころには、恩師上田万年先生をはじめ、藤岡勝二・上田敏両先進の、辞書編集法およびその沿革についての論文等を読んで、つとに啓発されたのであった。柳村上田からは『新英大辞典』の偉業の紹介を「帝国文学」の誌上で示され、目をみはって海彼にあこがれた。われらもいかにしてか、理想的な大中小はともかくも、あんなに整った辞典を編んでみたいものだと、たのしい夢を見たのであった。
かくて、英米独仏の大辞書の完備に対して限りなき羨望の情が動き、ひたむき学究的な理想にのみふけりつつ、青春の客気で現実的方面については一層暗愚であったことは、後年とほぼ同様であった。卒業後の三年めの明治三十五年(一九〇二年)から凡そ五年間、それぞれの大辞典の編著や統理に成功を収めた上田・大槻・芳賀・松井等の諸先覚には、他方において国語の研究や調査や教育や改善やの諸事業にわたって計るべからざる種々の資益を得たことが、かれこれと想起されてくる。