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おもいちがいものがたり
思い違い物語
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《思い違い物語(おもいちがいものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 44,840 字 · 88 頁
でですね、小ちゃな奴凧がそこの地面の上にのたばったわけです」
「おまえがそれをあげたんだろう」右衛門はついに喚きだした、「――そのへたばった凧を、その小っぽけな奴凧をその子供の代りにあげたんだろう」
「貴方は見ていたようなことを云いますが」
「うるさい、黙れうるさい」右衛門はここでまた拳骨で眉間を押え、右の足で廊下を叩きながら叫んだ、「――なにがひくにひかれぬだ、武士の面目と凧とどんな関係がある、殿までひきあいに出す必要がどこにあるんだ、おれはおまえに満信へ使いを頼んだ、おれは返辞を待っていた、ところがきさまは途中でひっかかって、まるで阿呆のように凧をあげていた、凧を、凧を、凧を」
「しかし待って下さい」泰三は少しずつ脇のほうへ退却しながら、「――私はふと使いのことに気がついたんです、これはいけない頼まれたことがある、こうしているばあいではないと、しかし気がついてみるとひどく腹が減ってる、非常な空腹なんで、まさか貴方がそんなにむきに怒ろうとは思いませんから、ちょいと午飯を」
「おれは上訴する、江戸の殿へ、おれは」
「いってまいります、すぐです」泰三は横っ跳びにうしろの襖をあけた、「――ほんのちょっとのまです、どうか暫く」