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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《悪魔の紋章(あくまのもんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 頁

青空文庫

立上る骸骨

「で、お爺さんは中へ入って見ないんですか」

小池助手がからかい顔に訊ねると、老人は顔の前で手を振って見せた。

「御免、御免、五貫も出して胸の悪い思いをするこたあねえからね。何なら、お前さん方御見物なすっちゃどうだね」

すると、宗像博士は何を思ったのか、その言葉を引きとるように、

「どうだ、小池君、一つ入って見ようじゃないか」

と、笑いもしないで云うのである。

「エ、先生お入りになるんですか」

犯人の捜索はどこへ行ったのだ。それを捨てて置いて、子供みたいにお化けの見世物を見たがるなんて、先生はどうかしたんじゃないかしら。小池助手はあっけに取られて、博士の顔をまじまじと見つめた。

「少し思いついたことがあるんだよ。……マア、黙ってついて来たまえ」

博士はそう云ったかと思うと、群衆を押し分けて、もう木戸口の方へ歩き出していた。

立上る骸骨

小池助手は、名探偵とも云われる人の、余りの子供らしさに、呆気にとられたが、ふと気がつくと、それには何か訳がありそうであった。博士は非常に実際的な規則正しい性格で、意味もなく見世物なんかへ入る人ではなかった。

「若しかすると、先生はこの化物屋敷の中で、妙子さんを探そうというのではないかしら」