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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《悪魔の紋章(あくまのもんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 頁

青空文庫

生体埋葬

地だんだを踏みながら、声を限りに訳も分らぬ事をわめき始めた。

生体埋葬

それから十分程のち、川手氏はもうわめくことをやめて、又節穴を喰い入るように覗き込んでいた。

その間に板壁の向側で何事が行われたかは、ここに細叙することを差控えなければならぬ。川手庄兵衛なる人物は、それ程残虐であり、夫婦のものの最期は、それ程物恐ろしかったのである。

いま、節穴の向うには、最早や動くものとては何もなかった。二人の男女は、後手に縛られたまま、グッタリとうつぶせに倒れていた。青畳の上には、池のように真赤なものが流れていた。苦悶と絶叫のあとに、ただ死の静寂があった。丸火屋の台ランプが、風もないのに、さまよう魂魄を暗示するかの如く、ジジジジと音を立てて、異様に明滅していた。

暫くすると、一方の襖が慌しく明けられて、二十五六歳程の召使らしい女が、胸に嬰児を抱きしめ、四五歳の男の子の手を引いて、息せき切って駈け込んで来た。賊に縛られていた繩を、やっと解いて、主人夫婦の安否を確めに来たものに違いない。赤ん坊を抱いているのを見ると、乳母ででもあろうか。手を引かれている男の子は、アア、これは何としたことだ。