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あいとにんしきとのしゅっぱつ

愛と認識との出発

倉田 百三

線上閱讀倉田 百三《愛と認識との出発(あいとにんしきとのしゅっぱつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 64,420 字 · 129 頁

青空文庫

物我相忘じ、物が我を動かすのでもない。我が物を動かすのでもない。只一の光景、一の現実があるのみである。(善の研究――一の四)

氏の認識論においては to know はただちに to be である。甲のみよく甲を知る。あるものを会得するにはみずからそのものであらねばならない。野に横たわる一塊の石の心は、みずから石と合致し、石となるときにのみ知ることができる。しからざるときは主観と石とが対立し、ある一方面から石を覗いているのであって、ある特定の立場から石を眺めてこれを合目的の知識の系統に従属せしめんとするのである。いまだ石そのものの完全なる知識ではないのである。すべての科学的真理はかかる性質の知識であって、われらの生活の実行的意識の理想から対象物を眺めたる部分的、方法的なる物の外面的の知識系統であって、物そのものの内面的なる会得ではない。ここにおいて氏の認識は科学者の分析的理解力よりも、詩人の直観的創作力に著しく接近してきて、われらをして科学的真理の価値の過重からきたる器械的見方の迷妄より免れしめ、新しくて、不思議の光に潤うたる瞳をもって自然と人生とを眺めしめるのである。