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ばしゃ
愛の挨拶・馬車・純粋小説論
横光 利一
線上閱讀横光 利一《愛の挨拶・馬車・純粋小説論(ばしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 40,699 字 · 78 頁
それでは昨夜学者のところへ花江の来たのは、そのことであったのかと由良は思ったが、なるほど自分も夢殿村をあれほど恐れたところから考えても、町のものの恐れるのも、恐れることだけならそれは伝統として無理はないと由良は思った。しかし、このあたり一帯の天然の持つ特長のうちで、他の地と一番違って優れた特長といえば、夢殿村の多くの患者達を収容させ得られるということにちがいないのだから、その優れた特長を助けずして土地に電車を通じさせるということは、それは天然自然の意志に反することだと由良は思った。
「それで、先生はもうその卦を御覧になったのですか。」
と由良は訊ねると、学者はもう自分は昨夜観てしまってあるので、君のとどれほど違って出るか験べてみたいのだと云った。そう云われると、由良も問題が問題で、これはいつものように冗談半分占筮出来ることではないと思って、出来る限り精神を筮竹に籠めて割ろうとしたが、患者達の泡のような身体にとり包まれて、浮き沈みしている哀れな花江の顔が脳中を去来し始めると、なかなか思うようには由良の心は落ちついて来なかった。そのうちに、彼は吸い込んだ息がなくなってだんだんに苦痛が激しくなると、遠くに花江の顔のもう早や消えようとした瞬間を待ってはっとかけ声かけて竹を割った。