輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

こきょう

故郷

太宰 治

線上閱讀太宰 治《故郷(こきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,843 字 · 22 頁

青空文庫

北さんも中畑さんも、あれっきりまだ二階から降りて来ない。北さん何か失敗したかな? と思ったら急に心細いやら、おそろしいやら、胸がどきんどきんして来た。嫂がニコニコ笑いながら出て来て、

「さあ。」と私たちを促した。私は、ほっとして立ち上った。母に逢える。別段、気まずい事も無く、母との対面がゆるされるのだ。なあんだ。少し心配しすぎた。

廊下を渡りながら嫂が、

「二、三日前から、お待ちになって、本当に、お待ちになって。」と私たちに言って聞かせた。

母は離れの十畳間に寝ていた。大きいベッドの上に、枯れた草のようにやつれて寝ていた。けれども意識は、ハッキリしていた。

「よく来た。」と言った。妻が初対面の挨拶をしたら、頭をもたげるようにして、うなずいて見せた。私が園子を抱えて、園子の小さい手を母の痩せた手のひらに押しつけてやったら、母は指を震わせながら握りしめた。枕頭にいた五所川原の叔母は、微笑みながら涙を拭いていた。

病室には叔母の他に、看護婦がふたり、それから私の一ばん上の姉、次兄の嫂、親戚のおばあさんなど大勢いた。私たちは隣りの六畳の控えの間に行って、みんなと挨拶を交した。