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こきょう
故郷
線上閱讀太宰 治《故郷(こきょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,843 字 · 22 頁
昨年の夏、私は十年振りで故郷を見た。その時の事を、ことしの秋四十一枚の短篇にまとめ、「帰去来」という題を附けて、或る季刊冊子の編輯部に送った。その直後の事である。れいの、北さんと中畑さんとが、そろって三鷹の陋屋へ訪ねて来られた。そうして、故郷の母が重態だという事を言って聞かせた。五、六年のうちには、このような知らせを必ず耳にするであろうと、内心、予期していた事であったが、こんなに早く来るとは思わなかった。昨年の夏、北さんに連れられてほとんど十年振りに故郷の生家を訪れ、その時、長兄は不在であったが、次兄の英治さんや嫂や甥や姪、また祖母、母、みんなに逢う事が出来て、当時六十九歳の母は、ひどく老衰していて、歩く足もとさえ危かしく見えたけれども、決して病人ではなかった。もう五、六年はたしかだ、いや十年、などと私は慾の深い夢を見ていた。その時の事は、「帰去来」という小説に、出来るだけ正確に書いて置いたつもりであるが、とにかく、その時はいろいろの都合で、故郷の生家に於ける滞在時間は、ほんの三、四時間ほどのものであったのである。その小説の末尾のほうにも私は、――もっともっと故郷を見たかった。