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うきふね

文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集(うきふね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,938 字 · 67 頁

青空文庫

墓所にはまだ折れたのがそのままでありましたから、外のと違って、そう言った事情で、犬にも猫にも汚させるのが可厭でしたから、俥ではるばると菩提寺へ持って来て、住職にわけを言って、新に塔婆を一本古卒塔婆の方は些少ですが心づけをして、寺へ預けて、往かえり、日の短い時の事です。夜に入ってから青山の墓へかわりのその新しいのを手向けたんです――(釈玉香信女。)――施主は小玉氏です、――忘れもしません。……誓ってそう云った因縁があるのですから、私に免じて、何うか、この塔婆は嬲らないで下さい。」

「嬲る。――嬲るとは何だ。」

「これは申過ぎました。何うか、お触りに成らないでおくんなさいまし。」

「触るよ、触る処か、抱いて寝るんだ。何、玉香が、香玉でも、女亡じゃは大抵似寄りだ、心配しなさんな。その女じゃああるめえよ、――また、それだって、構わねえ。俺が済度して浮ばして遣る。……な、昨今だが、満更知らねえ中じゃねえから、こんなものでも触るなと頼めば、頼まれねえものでもねえが、……誰だと思う、ただ人と違うぜ。大棍元教の大先達が百ものがたりの、はなれ屋の破行燈で、塔婆を抱いて寝たと言えば、可恐さを恐れぬ、不気味さにひるまない、行力法力の功徳として一代記にかき込まれるんだ。