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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
線上閱讀泉 鏡花《文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集(うきふね)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 32,938 字 · 67 頁
露萩
「これは槙さん入らっしゃい。」
「今晩は――大した景気ですね。」
「お化に景気も妙ですが、おもいのほか人が集りましたよ。」
最近の事である。……今夜の怪談会の幹事の一人に、白尾と云うのが知己だから槙を別間に迎えながら、
「かねがね聞いております。何時も、この会を催しますのに、故とらしく、凄味、不気味の趣向をしますと、病人が出来たり、怪我があったりすると言います――また全くらしゅうございますからね。蒟蒻を廊下へ敷いたり、生大根の片腕を紅殻で落したり、芋※で蛇を捩り下げたり、一切そんな悪戯はしない事にしたんですよ。ですが、婦人だけも随分の人数です。中には怪談を聞く人でなくて、見るつもりで来ているのも少からずと言った形ですから、唯ほんの景ぶつ、口上ばかりに、植込を向うへ引込んだ離座敷に、一寸看板を出しました――百もの語にはつきものですが、あとで、一人ずつ順に其処へ行って、記念の署名をと云った都合なんで、勿論、夜が更けましてから……」
――この時もう十一時を過ぎていた。槙真三が、旅館兼料理屋の、この郊外の緑軒を志して、便宜で電車を下りた時は、真夏だと言うのに、もう四辺が寂寞していたのであった。