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しんまんようものがたり

新万葉物語

伊藤 左千夫

線上閱讀伊藤 左千夫《新万葉物語(しんまんようものがたり)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,832 字 · 10 頁

青空文庫

こういって二人は、つくづく心の中で神様に感謝するらしく涙を拭いた。

どっどっと馬の足音がすると思うと、ふッふッと強い馬の鼻息が聞え、やがて舌金を噛む音が聞えて、馬は庭まで這入ったけはい。お小夜はすぐ庭へ出て父の荷卸しに手伝ってやる。月が冴えて昼間のように明るい。

「こんなに晩くなってお父さん寒かったべい」

「ああに寒かあなかった。鰯網が出たからね。それを待っててこんなにおそくなった。そらその菰に三升ばかり背黒鰯があらあ。みんなは、はあ飯くっちゃっぺいなあ」

「ああ、たべっちゃった。お父さんにだけ少し拵えてあげますべい」

話す間もお小夜は油断なく手早に事を運ぶ。馬盥を庭の隅へ出して湯を汲めば父は締糟を庭場へ入れ、荷鞍を片づけ、薄着になって馬の裾湯にかかった。

いかにも寒々とした月夜の庭に、馬は静かに立っている。人は両肌脱いでしいしい口拍子を取って馬を洗う。湯気は馬の背以上にも立って、人も馬も湯気にぼかされてほとんどそのまま昼のようだ。園部の家では夜番の拍子木が二度目を廻っている。

お小夜は食事あたたかく父に満足させて後、病母の臥床をも見舞い、それから再び庭場におりて米を搗き始めた。