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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
病孫子
と、ぼつぼつ、それについて、郷土の者のはなしを耳袋へ集めはじめた。
病孫子
菩提山――
それは、この郷の、岩手城のある山だった。
半兵衛重治の幼名を、菩提丸とよんだのは、それに因んだのかもしれない。
母なる人がたいへん信仰家だったから、或いは、仏教のほうから名づけたのかも分らない。
いずれにせよ、重治は、幼少から違っていた。天才的な子だった。
天才は、一種の畸形であるというが、半兵衛重治も病弱だった。――青年の頃になると、その病骨は、なお、はっきり現われて来た。
腺病質という体つきである。痩せぎすで、色白く、耳は美しいばかり紅い。
菩提山に雪がふると、
「――こう寒うては、お城の若様がまた、お咳を喘いてばかりいることだろう」
と、領民はすぐ思い出して噂するほど、弱々しかった。また、春になると、
「若様がお馬場へ通る」
と、里の娘たちは、山桃の木にかこまれているお厩門から出てゆく、城主の嫡子のすがたを、畑から見るのを、楽しみにしていた。
絵に描いたようだった。
馬のり袴に、桔梗色の袖無を羽織り、朱房の鞭を手にして――伊吹の牧へよく乗りまわしに出るのだった。