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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

「今のは誰?」

藤吉郎が訊くと、

「先生の妹御さまだ」

と、その美を、わが師の庭の花と誇っているらしく、小熊は、これだけは非常に素直な返辞をした。

「頼む。どうか念のため、一度でよいから奥へ取次いでくれ。いけないといったら帰るから――」

「ほんとに帰るかい」

「帰る」

「きっとだな」

小熊は、念を押して、とうとう奥へ行ってくれた。けれど直ぐ戻ってくると、鼻くそを抛るように云った。

「いやだとさ。客に会うのは一切嫌だって。……案のじょう叱られちまッた。さあ小父さん、帰っておくれ。これから先生に御飯をさし上げるんだから」

「では今夜は帰ろう。そして改めてまた、出直そう」

素直に折れて、藤吉郎が立ち去りかけると、その背へ、

「来てもだめだよ」

小熊は浴びせて云った。

藤吉郎は黙々と戻った。彼は闇も厭わず麓まで下りて行った。供の佐屋桑十を残してある農家まで行って寝た。

翌る日、起き出ると、彼はまた、山支度して山へ登った。そして日の暮れ方、

「頼もう」

と、きのうと同じように、半兵衛重治の山屋敷を訪れていた。

きのうは厨働きの童子などを相手にしすぎたので、きょうは玄関と覚しい入口へかかって訪れてみた。