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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
と、案内して進んだ。
谷も道も窮まったかと思えば、そこの絶壁へすがる藤蔓があった。
峰をめぐって、もう彼方の山へ渡る術もないかと思えば、熊笹のうちに、微かな隠れ道が谷へ通じている。
「もはや搦手までは、二里ほどの山道。この山絵図を辿ってお越えあれば、城の水門へ行き当たりましょう。――お別れいたしとうはなけれど、お許しにあまえて、それがしはここにて」
治郎左衛門は、途中で一行と別れ、ひとり後へ帰って行った。
元来が義に強い男である。藤吉郎に心服して、今は二心ない者とはいえ、一度は主人とした斎藤家である。その本城の間道へ道案内に立つことは、心中苦しそうだった。
藤吉郎は、その心根を察したので、わざと途中から帰したのである。
ひと休みして、
「どれ、進もうか」
残る九人は、また、黙々と歩みつづけた。
二里といえば近いが、道なき道である。少し行っては、
「山絵図、山絵図を」
と、藤吉郎は、それと首っぴきになって、隠し道をさがした。
「……はてな?」
辺りの山容と山絵図とが、どう見較べても合わなくなった。何より眼じるしの渓流の水脈もちがっている。
「迷ったぞ、戻れ」