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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

洲股

信長の眼が見えているといないとに関わらず、心から押しいただいて飲み乾した。

宴も酣の頃――

主賓と、信長とは、款晤のあいだに、

「もし、松平殿が天下の将軍とならば、織田はその幕下に従いましょう。もし織田家が天下の将軍となったら、松平殿は織田の幕下に従い給え」

とか約束したなどと、後に側近者は云い伝えたが、真偽のほどは信じられない。なにせよそれ程に、両者の款晤が親密に見えたことは、事実に相違ないけれど――。

それはさておき。織田の群臣が一驚を喫したのは、この会盟が行われたすぐ翌日、元康は、今川領の上ノ郷の城を攻め、城主の鵜殿長照を斬って、もう陣頭の人となっていたことであった。

洲股

その年の三月だった。

百花の匂いも、春光も閉じこめて、評定の間は、暗かった。

昼だが、所々に、燭が置いてある。出入口には、見張の侍が眼光を研ぎ立てていた。

「誰でもよい。意見あらば、意見を述べよ」

信長の声であった。

「…………」

寂としているのだ。

居流れている家中の顔に、所々の燭ばかりが赤く揺らぐ。

外には、春やうららかに、小鳥の声が遠くする。――しかし、ここの薄暗い燭とたくさんな侍どもの顔は、戦気に燃えていた。