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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「所存はないのか。何も――」
かさねての声の時である。
「愚見、ござりますが」
「勝家か」
「はい」
柴田勝家が述べた。
「ただ今、仰せ出しの――洲股に御築城のお企て、寔に、御智略にはござりますが、ちと、無謀かとも存ぜられます」
「智略なりとも賞め、無謀なりともいい、どっちなのだ勝家。忌憚なくいえ」
「されば、あの地形に、味方の一塁を築くなど、所詮、いうべくして行われぬことと思われまするので」
「なぜ?」
「地勢険悪、自然の力には人も抗し得ませぬ。――また、敵もおめおめと見てはおりませぬ。必然、無数の犠牲の者を出して、結果は遂に、不成就に終ること火を見るよりも明らかかと思われます」
勝家の意見につづいて、
「同様に考えられます」
「柴田殿の御意見、至極と思われます」
「自分儀も」
「てまえも」
などと述べるのが大多数であった。信長は、むむ――と唇をむすんでしまう。気に入らないのだ。しかし、衆智は、自分の考えに合致しない。無謀という勝家の説に、ほとんどが、同意見らしい。
老臣林佐渡も。
一族の織田勘解由も、名古屋因幡守も。――佐久間も、丹羽も。
その衆智へ糺しながら、実は信長の心こそ、衆智へ合致しないのであった。