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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

赤沢加賀守は、放鷹の名人として、また、鷹をよく飼う名家として、その頃、著名な人だった。

信長もまた、少年の時から、鷹狩は好きだと聞いていたので、凡ならぬ好意を示してきたわけである。

ところが。

信長は、使者を泊めて歓待もし、充分、謝意ものべたが、その使者の見ているところで、

「この名鷹はしばらくの間、青空へあずけておこう」

と、放してしまった。

そして再び庭へ下りて来ても、見ているだけで、飼わせなかった。

使者は、案じて、

「何か、お気にでもさわったことがありましょうか」

と、たずねた。

「否とよ」

信長は、莞爾として、次のようにいった。

「――ご覧ぜよ、今や、朝廷の御衰微、四海の騒乱、百姓たちも安んぜぬ世の様を。信長は、赤沢殿以上、放鷹は大好きでござるが、思うに、今はこれを玩ぶ時でもありますまい。――他日、近く旗を京都に上せ、諸州の群雄どもをしずめ、上の御宸襟をやすめ奉った上には、心ゆくまで、長閑けき空へ鷹も心も放ちとうぞんずる」

そしてまた、

「赤沢殿のおこころざしはありがたくいただいた。使者にも大儀であった」

と腰の刀など遣らせて帰したということが――この春にはあった。