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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

よく仕込んで与えよ」

と、いいつけた。

元服前の小童は、それを呼ぶのに、女子のように、名の頭字に「お」をつけて、市松を於市とか、虎之助を略して於虎という風によぶのは、その頃の慣わしだった。

於市と於虎は、主君へお辞儀をすますと、茂助の後に従いて退って行った。

虎之助の母は、うしろ姿を見送って、また、涙をたたえていた。

「親の案じるようなものではおざらぬ。すぐ城内の者にも馴れよう。叔母御、安心するがよい」

藤吉郎はなお、寧子に向って、於虎の母へ、城内の住居を与え、何かと平常も談し相手になってやるがよいと云い足した。

於虎の母は、

「御恩は忘れませぬ」

と、彼の温情をふし拝んだ。

こういう例は、彼女の場合のみではなかった。縁故をたどって、彼を頼ってくる者に、彼は一視同仁だった。百川を容れる大海のように、芥も容れ清流も容れた。

ひと月も経つと、於虎は、馴れるどころか、生来の面目をあらわして、城内第一の腕白者と名を取ってしまった。木登り屋根登りはする、小姓組の小さい仲間を泣かす、悪戯はする、逃げることはまたおそろしく素迅ッこい。

於虎が現われてから、於市は、自分の名声を奪われたように、忽ち彼を敵視した。